紅海の比較的深い海中で、虹のように色とりどりの光を放つサンゴが見つかった。これまで見たことがない光景だと研究者らは感嘆している。
英サウサンプトン大学の海洋生物学者ヨルク・ヴィーデンマン氏は2014年、イスラエルにある海洋科学共同研究所と連携し、同国エイラトの近くで、光合成だけでは生物が生きていけない明るさ、すなわち水深30~100メートル余りの中深度にあるサンゴ礁の調査を始めた。
暗い海の中で研究チームは、鮮やかな緑やオレンジ色に輝くサンゴがあるのを発見した。ヴィーデンマン氏はその様子を撮影してから、異なるサンゴ16種のサンプルを採取してビニール袋に入れ、英国の研究室に持ち帰って更に詳しく調べた。
海中の生息環境を再現しようと、ヴィーデンマンがサンゴを青色の光や紫外線で照らすと、やはり緑や赤色に輝くことが分かった。興味深いことに、これらのサンゴは光が全くない状態でも色素を作れることも判明した。日光がほとんど届かないことを考え合わせると、色素は「日焼け止め」として機能しているのではないはずだ。
研究チームはむしろ、色素は共生藻の光合成に役立つように光を多く作り出していると考えている。藻類が色素の恩恵を受けて、酸素や栄養分などサンゴに必要な物質を供給しているのだと。
「この研究に関して私が最も興味を感じるのは、非常に近い種の間でも幅広い色彩が見られることです」と語るのは、米スクリップス海洋研究所の海洋生物学者で、今回の研究には関わっていないディミトリー・ディヘイン氏だ。ディヘイン氏は、近縁種のサンゴなら色も似ているだろうと予測していた。それだけに、ヴィーデンマン氏らが発見した色彩の豊富さは意外だった。虹のように色鮮やかなサンゴは、我々人間の目を楽しませてくれるだけではない。将来、医療の発展に貢献するかもしれない。