ぬっぺふほふは、『画図百鬼夜行』や『百怪図巻』などの江戸時代の妖怪絵巻にある妖怪。顔と体の皺の区別のつかない、一頭身の肉の塊のような姿で描かれている。
妖怪研究家の多田克己は、のっぺらぼうは現在では顔に目鼻がまったくない妖怪として知られているが、古くはこのぬっぺふほふのように顔と体の区別のつかない形態のものだった。顔に白粉をぬっぺりと塗った様を「白化」というが、この「白化」には「しらばっくれる、とぼける」「明け透けに打ち明けて言うと見せかけて騙す」「露骨になる」「白粉で装う」「白い化物」などの意味がある。その「白化」の意味の体現により、ぬっぺふほふはまず人間に成りすまして(しらばっくれて)通行人に近づき、親しげに会話をし(明け透けに打ち解け)、相手が油断したところで正体を現し(露骨になり)、本来の姿(白粉をべったり塗ったような白い化物)を見せるのだという。
昭和・平成以降の文献には、ぬっぺふほふは廃寺などに現れる妖怪などと記述されているが、これは民俗学者・藤沢衛彦の著書『妖怪画談全集 日本篇 上』で「古寺の軒に一塊の辛苦の如くに出現するぬっぺらぱふ」と解説されていることに由来するものであり、藤沢が「寺に現れる」と述べたのは、『画図百鬼夜行』の背景からの連想に過ぎない創作と指摘されている。文献によっては、死肉が化けて生まれた妖怪で、この妖怪が通った跡には腐肉のような臭いが残るなどと記述されているが一次出典は不明。